フリーランスとして経理の仕事をするには 必要な知識は
2025年2月5日 更新
フリーランスの職種も多岐にわたります。長年の知識、経験をベースとして経理業務をフリーランスとして活動していきたいとお考えの方も多いのではないでしょうか。
この記事では、フリーランスとして経理業務を行っていきたいと希望される方に、フリーランスとはどのような働き方なのか、経理の仕事の求職方法、必要なスキルなど、ポイントとなる項目をまとめてみました。
1.フリーランスとは
フリーランスとは、特定の企業などに属さずに自分一人で仕事を契約する人のことを指します。求められるスキルなどを契約ごとに提供し、その対価として報酬を受け取るという働き方です。
極端にいえば、個人として発注主から業務を受注する場合、会社員や主婦もフリーランスに該当します。フリーランスの業務の受注には、公的機関への申請や許可は必要ありません。フリーランスには雇用関係がないため、労働基準法の規定にある最低賃金や有給休暇、労災補償などの労働者保護の規定が適用されないので注意が必要です。
2.フリーランス経理として活動するために
(1)事前準備
フリーランスは個人での活動となるため、自分を売り込むための準備は欠かせません。多くのフリーランスが実践しているのが、SNSやブログでの宣伝、名刺の作成です。SNSやブログをこまめに更新し、常にアクティブな状態にしておくことが信頼にも繋がります。
名刺もデザインや色、フォントにこだわる、メッセージ性のあるテキストを載せるなどさまざまな工夫をして、渡す相手にインパクトを与えることがポイントです。
また、必要に応じて、周辺機器や事務用品などの仕事道具、仕事を行う部屋やコワーキングスペースなども事前に準備しておくことをおすすめします。
また、経理知識の証明として、簿記の資格を取っておけば、武器となります。
(2)フリーランスとして経理の仕事を獲得するには
フリーランスになったら、自分で仕事を獲得しなければなりません。その手段としては、人脈を活用する。過去関係した取引先とのパイプを活用する、SNSなどを通じて自分自身を宣伝する、クラウドソーシングサイトやエージェントへ登録する、などが考えられます。
フリーランス専門の人材エージェントでは、案件紹介だけでなく日々の仕事内容やキャリアアップについての相談もできるので、フリーランスを始めたばかりで不安のある方にとって心強い存在です。経理業務のどのような仕事があり、収入はいくらくらいか等、相談してみるとよいでしょう。
未経験の方でも経理の知識を身につければ、実務経験が無くとも案件獲得は可能です。
まずは最適な勉強法で簿記の資格を取り、経理の知識を深めたら経理代行サービスやクラウドソーシングで案件獲得を目指すとよいでしょう。
3.フリーランス経理のメリット、デメリット
(1)メリット
・作業時間や場所の自由度が高い
会社員として働いていると、通勤電車や人間関係、残業などに負担を感じても無理をしなければならないことがあります。体調、心身のバランスを崩してしまう恐れもあるでしょう。
しかし、フリーランスであれば、契約時に稼働時間や連絡方法などの条件を詰めて決めておくことで、これらの負担を軽減できます。さらに在宅ワーク可能な案件の場合は、通勤の必要がなく、自宅やカフェなど好きな場所で作業ができるのもメリットです。
・努力やスキル次第で高収入が期待できる
会社員は、ほとんどが固定給です。また成果を重んじる人事評価もあり、収入が仕事量や責任の大きさに見合わず、不満が募る人も多いでしょう。
フリーランスとして実力を発揮することで、納得できる成果報酬を得られる可能性は高まります。
・得意分野や好きな内容の案件を選べる
会社員は、人事や上長などが決めた組織への配置となることが多いです。組織の中で希望に沿った担当を任せてもらえる企業もありますが、タイミングよく要望どおりの業務があるとは限りません。希望が叶うのは数年後ということもあるでしょう。
フリーランスになれば、自分の好きなタイミングで、得意な領域やチャレンジしたい内容など希望に合う案件を選んで参画できます。
・人間関係になやまされにくくなる
フリーランスであれば、人間関係に悩まされにくくなる傾向があります。会社のような上下関係などが発生しないことや、人の目を気にしなくて済むような環境に身を置きやすくなるためです。
また、もし相性が悪い仕事相手がいたとしても、今後そのクライアントとは契約をしないという選択ができるため、嫌な関係が長引かないのも魅力だといえるでしょう。
(2)デメリット
・収入が不安定になりやすい
フリーランスは、成果をあげた分だけ報酬を受け取れます。裏を返せば、案件を受注できないと収入はゼロです。フリーランスとして安定するまでには、時間がかかることもあるでしょう。
収入が不安定な時期の生活の仕方や、失敗してしまった場合のリカバリー方法について検討しておく必要があります。
・契約が打ち切られるリスクがある
業務委託契約は、一般的に契約期間が明確に定められており、依頼主の都合で契約が途中で打ち切られるリスクも伴います。
特に、契約書で途中解約の条件や通知期間が明記されていない場合、依頼主が予告なしに契約終了を通告する可能性もあります。これにより、収入が突然途絶える事態に直面するケースもありえます。
このリスクを軽減するためには、契約書に解約条件を明確に記載し、例えば「解約する場合は30日前に通知すること」といった取り決めが盛り込まれているか確認しておきましょう。また、複数のクライアントと契約することで、単一の契約終了による収入減少のリスクを分散させることも重要です。
・労働基準法が適用されず最低賃金が保障されない
業務委託契約は雇用契約ではないため、労働基準法が適用されません。
その結果、最低賃金や労働時間の制限といった保障がないため、報酬額が非常に低くなるリスクがあります。特に、契約前に報酬の計算方法や支払条件が十分に交渉されていない場合、業務量に対して不公平といえる報酬が支払われる可能性もあるでしょう。
このリスクを回避するためには、契約書に報酬額や支払い条件を明確に記載されているか確認しておくことが重要です。支払額や支払い条件が明記されているかをしっかり確認し、自分の労働量やスキルに見合った報酬が得られるよう必要に応じて交渉しましょう。
・税務処理などの事務作業を自分で行う必要がある
フリーランスとして業務を行う場合、確定申告や住民税や所得税などの納税手続きなどの作業を自分で行う必要があります。
雇用契約の場合は、源泉徴収や年末調整を雇用主が代行してくれますが、フリーランスの場合は、自分で確定申告を毎年行う必要があるため、最低限の税務知識を習得しておくことも必要です。
・生活のリズムが崩れやすい
自由な時間に働けることから、夜型の生活が基本となり、不規則な生活リズムになってしまう恐れがあります。経理の仕事は、期限が決まっている仕事が多く、かつては繁忙期には徹夜などもした時代もありました。規則正しい生活や、徹底したスケジュール管理を心がけると良いでしょう。
・社会的信用度の低さから各種審査が厳しい場合がある
会社員は、継続的に会社との契約が見込まれ収入が安定している、体調不良の際にも各種休暇制度でカバーできるなどの面から、社会的信用度が高いです。
一方、フリーランスは会社という大きな後ろ盾がないため、社会的に見て信用度が低いとされています。ローンやクレジットカード、不動産などでの審査において、会社員よりも厳し目に判定されることがあるようです。例えば、転居で賃貸物件を借りる場合、収入が少なければ保証会社の審査書類として預金残高がわかる資料の提出も必要となります。
4.フリーランス経理の仕事内容
経理の主な業務は、企業のお金の流れを管理することです。フリーランスの経理が担当する業務は、一般的な経理担当者と同様で、日常の経理処理が多く、場合によっては財務管理のような仕事を担当することもあります。
・ 会計ソフトへの仕訳入力(記帳)業務
・ 伝票や領収書などの整理
・ 入出金管理
・ 売掛金、買掛金管理業務
・ 月次決算
・ 決算、申告関連の業務
・ 給与計算業務
・ 年末調整業務
・ 予算管理
5.フリーランスの経理の需要
フリーランス全体の割合からすると、経理を専門として稼いでいる人は4.6%以下と非常に少ないとのことです。
しかしフリーランス経理の市場は拡大傾向にあり、主にスタートアップ企業や少人数規模の企業で需要が高まっています。
それは、人材が潤沢で経理部門に多くの人員を配置できる大手企業とは異なり、スタートアップ企業や中小企業は限られたリソースで経理機能を確保する必要があるためです。
そのうえ、人口減少や働き方改革、残業規制の強化などにより人手不足感は、ますます強まっています。
そのため、企業がフリーランス経理を活用するシーンが確実に増えましたし、今後さらに増えると思われます。
6.企業がフリーランス経理を活用する背景
(1)経理の役割の変化
経理は、バックオフィス業務であり利益を生まない仕事でした。しかし、近年では日々の会計情報を記録するだけでなく、経営的な観点からのデータ分析や情報開示、資金調達などの財務戦略、株主などに対するIRなど、企業の経営効率化および信頼性やイメージを高める活動が求められています。いかに従来メインとしていた日々の記帳業務などを効率化して、利益を生むことができる部署として新たな役割を担うかが重要視されています。
(2)外部に出せる環境が整備された
これまで経理業務は紙の仕事が多く企業の内部でしか処理ができない状のが実情でした。しかし、現在ではIT技術の向上によりデジタル化が進み、通信・情報共有が整備され、セキュリティ面も強化されたことで、リモートワークも珍しくなくなりました。
(3)経理人材の不足とコスト削減の両立
社内で経理の人材育成をするためには、一定の時間とそれに伴う賃金が必要です。しかし、個人事業主や中小企業、事業を始めたばかりのスタートアップ企業では経理専任の担当者を雇うことは、従来から難しかったうえに、さらに昨今の人口減少や働き方改革、残業規制の強化などにより、経理担当者の確保はさらに困難になりました。
こういった理由により、個人事業主や中小企業、スタートアップ企業では、実務経験のあるフリーランスの経理職に依頼する方が効率的と判断されることが増えてきているようです。
7.経理担当者に求められる経理知識
経理担当者に求められる経理知識は、企業の財務管理や会計処理を適切に行うために不可欠です。経理知識には以下のようなものがあります。
(1)会計の基礎知識
簿記の知識(仕訳・勘定科目)
仕訳の基本ルール(借方・貸方)
勘定科目の適切な使用方法(例:売上、仕入、経費、固定資産、負債など)
試算表の作成と確認
貸借対照表(B/S)・損益計算書(P/L)・キャッシュフロー計算書(C/F)の作成
会計原則・会計基準
一般に公正妥当と認められる会計原則(GAAP)
日本基準(企業会計基準)や国際会計基準(IFRS)の基礎
財務諸表の理解
貸借対照表(B/S)、損益計算書(P/L)、キャッシュフロー計算書(C/F)の構成
(2)税務知識
法人税・消費税・所得税の基本
税務申告の流れ
消費税の仕組み(課税・非課税・免税の違い)
源泉徴収・年末調整
給与支払時の源泉徴収義務
年末調整の計算方法
(3)経費管理・資金管理
経費精算のルール
交際費、福利厚生費、旅費交通費の違い
資金繰りの基本
キャッシュフロー管理
収支予測の立て方
(4)会計ソフト・システムの使用スキル
会計ソフト(例:弥生会計、freee、勘定奉行)
ソフトを活用した仕訳入力、帳簿管理
Excelスキル
VLOOKUP、SUMIF、ピボットテーブルなどを使ったデータ整理
(5)会社法・労務管理の基礎
会社法・商法の基礎知識
会社の決算公告義務
給与計算・社会保険関連知識
健康保険・厚生年金・雇用保険の仕組み
(6)コミュニケーション力・論理的思考力
社内外との連携
税理士、監査法人とのやり取り
社内の各部署との連携(経費精算、予算管理)
正確性・細かい確認作業
計算ミスや仕訳ミスを防ぐチェック力
経理担当者は、単なるデータ入力ではなく、会社の財務状況を把握し、適切な管理を行う役割を担います。最新の法改正や税務知識のアップデートも必要になるため、日々の勉強も大切です。
以上は、あくまでも経理担当者の知識の範囲を記載したにすぎませんので、この知識がすべて必要というわけではありません。経理の知識のない方でも、これからフリーランス経理として活躍できるチャンスはいくらでもあります。積極的にチャレンジしてみましょう。
8.経理に向いている人の特徴
・数字に強い
経理は仕事をするうえでお金と密接に関わるため、数字に強い方は経理に向いているといえるでしょう。また、ただお金の計算をするのではなく、お金に関するデータを活用しやすいように数値化したのち、それをもとに改善点を見つけたり解決策を提案したりします。
つまり経理は、数字から「おかしな点がないか」を判断し、「どのように改善できるか」を考える能力が求められます。
・学ぶことを苦に感じない
経理の仕事は専門的な知識を必要とます。例えば、新たな会計基準が制定される。制度会計での手続きに変更が発生する。新たな税制が導入される。税法が改定される。など学ばねばならないことは多々あります。
そのために最新の情報を把握し学び続ける姿勢が重要です。
・企業を俯瞰的にみられる
経理業務では、月次決算書または年次決算書を作成します。いずれにしても会社で行われた取引の集大成である決算書の期間比較を通じて会社の課題を把握、提起することが重要になってきます。
・地道にコツコツと作業するのが得意
経理業務は、デスクで高い集中力を維持し、長時間の作業を行う場合があります。やはりコツコツと地道に作業することを苦に思わない人が向いています。
・コミュニケーション能力が高い
経理は1人でコツコツとした作業がある一方、チームで協力して作業をすることもあります。そのため、コミュニケーション能力が高い方は経理に向いているといえます。
また、他の部署からあがってくる数字を取りまとめるため、他の部署の社員とコミュニケーションを取ることもあるでしょう。業務を滞りなく進めるには、相手の意図していることをくみ取ったり、自分の意図していることを正確に伝えたりするコミュニケーション能力が重要です。
8.まとめ
フリーランス経理職にたいする需要は、コロナ禍を経てさらに増えつつあるようです。経理経験のない方も、積極的にチャレンジしましょう。
フリーランスは、行動のほとんどが自己責任となる職種です。福利厚生も受けられず、厚生年金や雇用保険にも加入できません。活動を始める前に必要なことを確認し、万全の状態でスタートを切れるようにしておきましょう。
フリーランスも所得税や住民税などの税金を払う必要があります。会社員時代は会社の経理担当にすべて任せていたことを、フリーランスになると自分で行わなければなりません。確定申告も忘れずに行いましょう。