資本準備金とは 分かりやすく説明します

2025年2月16日 更新

資本準備金は、法定準備金のひとつで、利益準備金とともに会社法で規定されています。企業設立や株式発行の際に株主から払い込まれた金額は、全額を資本金としたり、資本金と分けて一部を資本準備金とすることも可能です。

資本金と資本準備金は、どちらも株主から払い込みを受けた資金であり、貸借対照表上の「純資産の部」に記載されます。では、両者区分する理由は、どこにあるのでしょうか。以下、分かりやすく解説します。

資本金とは

資本金とは、事業を運営するための元手となる資金のことです。企業が事業運営のために株主から出資を受けた資金のうち、会社の基本財産として計上される部分のことです。企業の設立時や増資時に発生し、会社の財務基盤の重要な要素となります。借入金のように返済義務はなく、貸借対照表の「純資産の部」に計上されます。

資本金は会社法によって設定することが定められており、法人登記の際にその金額を記載しなければなりません。

 

資本準備金とは

会社法では、設立や株式の発行に際して払い込まれた金額のうち、2分の1を超えない金額までは資本金として計上しなくてよいことが認められています。この部分を資本準備金といいます。

なお、資本金に計上しなかった部分の金額を、資本準備金以外に計上することはできません。資本金に計上されなかった額は、必ず資本準備金に計上しなければなりません。

例えば、企業設立時の資金が3,000万円あった場合、最大1,500万円まで資本準備金として計上できるということです。

資本準備金の計上例

会社が新株を発行すると、投資家は株式を購入するためにお金を払い込みます。
その際、払込金額のうち一部を「資本金」に、残りを「資本準備金」として計上できます。

例えば、新株を1,000株発行し、1株あたり150円で15万円が払い込まれた場合、
【資本金】   100円 × 1,000株 = 100,000円
【資本準備金】  (150円 – 100円) × 1,000株 = 50,000円

あるいは、

【資本金】   75円 × 1,000株 = 75,000円
【資本準備金】  (150円 – 75円) × 1,000株 = 75,000円

となります。

この場合、資本準備金は75,000円が上限となります。

資本準備金の用途

資本準備金は、直接的に株主に配当として支払うことはできません。
しかし、会社の財務基盤の強化や将来的な資本政策のために活用できます。
具体的には、以下の用途に充てることが可能です。

1,機動的に資本金を増やせる

会社の発展や信用度の維持には、資本金の増額(増資)が必要な場面もあります。

会社の資本金を増額する場合、株式を発行して株主や投資家から出資を受ける「有償増資」が一般的です。しかし、一般株主からの払い込みは、出資の募集や手続きなどに手間がかかる割に、期待どおりの結果が得られる保証はありません。

一方で資本準備金の一部、またはすべてを資本金に組み入れることもできます(「無償増資」)。資本準備金を資本金に組み入れる方法は、株主総会における普通決議のみで済みます。このように、積み立てておいた資本準備金を資本に組み入れることで、手軽にかつ、臨機応変に対外的な信用力を強化できるようになります。

2,税務上のメリット

会社運営のための元手を資本金と資本準備金に振り分けることで、節税につながるメリットもあります。法人が支払う各種税金の中には、資本金の金額に応じて税率が高くなるものがあります。

例えば法人税率は、資本金額が1億円以下であれば所得が年800万円以下の場合は15%です。原則の税率は23.2%なので、かなりの節税効果が期待できます。

また、消費税についても資本金に応じて優遇措置があります。資本金額が1,000万円未満の場合、設立から2年間の消費税の納付が免除される制度があります。設立時には資本金を1,000万円未満におさえれば、設立1期目・2期目は原則として免税措置を受けることが可能です(インボイス登録をする場合を除く)。

3,損失の補填

決算で赤字が続いて債務超過に陥ると、金融機関や取引先、投資家などからの信用が低下し、経営に悪影響を及ぼす可能性があります。資本準備金を用意しておくと、このようなときに、資本準備金を取り崩して補填することができます。

資本金を取り崩して赤字を補填することもできますが、必要な手続きが多く、手間がかかります。資本金は登記されるため、取り崩しをおこなうと資本金の変更登記も必要となります。

一方、資本準備金は、基本的に株主総会の決議があれば補填できます。会社の信用を維持し続けるためには、赤字は大きな障害となります。赤字を補填できるよう準備しておくと、取引先や金融機関からの信用度低下を防ぐことが可能となります。

利益準備金との違い

資本準備金は、株式発行に関連する資金であり、株主から払い込まれた金額が元になっています。
一方、利益準備金は、企業の営業活動によって得た利益の一部を積み立てたものです。

まとめ

資本準備金は、新株発行時の払込金額のうち、資本金にしなかった部分の金額のことです。株主からの払込額のうち最大1/2まで計上できます。
配当には使えませんが、資本金への振替や損失補填などに活用可能です。
会社法で規定された準備金の一種であり、企業の財務健全性を高めるために重要な役割を果たす。

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